【書評】有吉与志恵(著),秋山エリカ(監修)表現スポーツのコンディショニングという本がかなり為になる!

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今回は「表現スポーツのコンディショニング―新体操・フィギュアスケート・バレエ編 (強くなるコアトレ)」という本についての私なりの書評です。

この本については、以前このサイトでも紹介したものでした。

この時はこうい興味惹かれる良さそうな本があるという紹介に過ぎなかったのですが、今回はその中身の感想について書いていきたいと思います。

本を読んだ率直な感想
まずこの本を読み終えた後の私の率直な感想は、「この本すごいなぁ!」というものでした。

あまりに抽象的な感想なのですが、この本を読むことで多くの方がそういう感想を持つのではないかと私は考えています。

しかし、一体何がすごいのでしょうか?

しっかりとした理論に基づいてコンディショニングをするということ
この本の「すごい」ところというのは、ちゃんとした「理論」に基づいてコンディショニングをするという大切さを教えてくれるところだと私は感じました。

ここで言う「コンディショニング」とは、本の内容に書いてあるように「筋肉を整える方法」(p.36)という意味です。

またあとで説明しようと思いますが、このコンディショニングには「リセットコンディショニング」と「アクティブコンディショニング」という2つの視点で分けられます。(p.36)

コンディショニング自体は、新体操選手として切り離せないケガや姿勢、バランスという様々な要素に関係してきます。

新体操の練習前または練習後にストレッチをするかと思いますが、コンディショニングとはストレッチをすることと同意だと考えていただければよいかと思います。

コンディショニング(ストレッチ)自体は実際のところそれぞれの動作にどんな意味があるのかを知らなくても、形として行うことはできてしまいます。しかしながら、それぞれの意味について理論を理解しているかどうかは、そのコンディショニング(ストレッチ)の質にも深くかかわってくるものだと私は感じました。

この本では、それぞれの動作に対して、どういう筋肉が関わっていて、どういう意味があるのかについて、写真と説明を通して解説してくれます。理論を理解し、これらのコンディショニング方法を取り入れることで、新体操の質が今までよりも一段階上がるのではないかと考えます。

ちなみに、この本の監修者には、「秋山エリカ」さんが携わっているのですが、秋山エリカさんが指導する「東京女子体育大学新体操部」でも、この本の内容のコンディショニングを行っていると言います。このコンディショニングを取り入れることで、「捻挫などのケガがなくなり、股関節が痛いという新体操選手に特有の痛みも激減した」と秋山エリカさんは語っています。(p.143)


モニタリング→リセットコンディショニング→アクティブコンディショニングのステップで身体を見直す
次はそれぞれのコンディショニングを行うためのステップについて軽く説明したいと思います。

モニタリング
モニタリングとは、新体操選手など表現を通して優劣を決めるスポーツ選手にとって必要なチェックポイントを確認する作業のことを言います。

本のp.44には「表現スポーツ選手のモニタリング」という題で確認したい項目が11個に分けて書かれています。それらを引用すると以下のとおりです。
  1. 膝、ふくらはぎ、くるぶしがちゃんとついてほしい
  2. 膝裏がついてほしい
  3. 腰がついてほしい
  4. 頭をつけたまま、うなずくことができる
  5. 背中をつけたまま、腕を上げることができる
  6. かかとをつけたまま、つま先立ちできる
  7. 膝が正面を向いてほしい
  8. 開脚が180度以上できてほしい
  9. 膝から下がついてほしい
  10. しっかり反ってほしい
  11. スピリッツ(前後開脚)で180度以上開いてほしい
表現スポーツのコンディショニング―新体操・フィギュアスケート・バレエ編 (強くなるコアトレ) p.44


モニタリングでは、これらの項目を1つ1つチェックしていきます。

たとえば、1番の「膝、ふくらはぎ、くるぶしがちゃんとついてほしい」という箇所のモニタリングでは、両足を閉じて立ったとき、正面から見て両膝、両ふくらはぎ、両くるぶしが離れていないことをチェックします。

また、その姿勢ができないということは、表現スポーツをする上での技術上の問題としてどういうものがあるのかを解説してくれます。この場合だと、「足のラインがきれいに見えず、軸がぶれてしまう」という問題点があるようです。

そして、本にはさらに、膝がつかない人/ふくらはぎがつかない人/くるぶしがつかない人、とそれぞれの場合について、どういうことが原因なのかということを事細かく解説してくれます。どの場所が疲労による使いすぎなのか、そして、それらを「コンディショニング」するためにはどういう方法が有効なのかということがすぐに理解することができます。

なお、モニタリング後には、まさによくない部分を改善し、よりよく演技をするための姿勢に戻してあげる作業をしていきます。その作業が次のリセットコンディショニングとアクティブコンディショニングというわけです。

リセットコンディショニング
リセットコンディショニングというのは、簡単にいうと「身体のゆがみをとるための筋肉のリセット」ということだと私は解釈しています。詳しくは本の第4章からに詳しく書いてあります。

日々の練習の中で筋肉は、コリやはりといった筋肉を硬くしてしまったり、疲労をため込んでしまう状態を伴ってきます。

そんな状態をなりにくくさせるのが、このリセットコンディショニングというわけです。

本によると、毎日1回、身体の温まっている練習後、そして疲れやすい箇所は練習中にも行うことを奨励しています。1日の疲れを取り除くために、就寝前に必ず行うように習慣づけることが、ポイントということらしいです。(p.72)

リセットコンディショニングについても、たくさんの写真とともにわかりやすく解説がなされています。

アクティブコンディショニング
最後がアクティブコンディショニングです。アクティブコンディショニングとは、
使えていない筋肉を正しく動けるように再教育する方法です。それは筋力トレーニングです。実施する際の最大の特徴は、息を吐きながら、筋肉を徹底的に意識するという点です。
表現スポーツのコンディショニング―新体操・フィギュアスケート・バレエ編 (強くなるコアトレ) p.104
ということのようです。

特徴にある「息を吐きながら筋肉を意識する」というのは、技の成功や、動きの中の軸の安定にかかわる部分だということです。

リセットコンディショニングが練習後に「使った」筋肉のゆがみをリセットすることだったのに対し、アクティブコンディショニングは「使っていない」筋肉を再教育する方法を言います。

本の第6章以降に書いてあるのですが、スポーツ選手が故障する原因には、『「使いすぎの筋肉」と「使えていない筋肉」とのアンバランスが故障を引き起こしている』ということらしいです。(p.134)

つまり、故障しない体づくりのために、モニタリングを通したリセットコンディショニングおよびアクティブコンディショニングが必要だとうことですね。

新体操は理論に基づいたトレーニングに変わりつつある
最後にこの本を読んだ最終的な感想です。

この本を読む中で印象的だったのは、新体操というスポーツが理論なしの行き当たりばったりの指導から理論に基づいた指導へ変わりつつあるのかなということです。

そう感じたのは、この本の監修者でもある秋山エリカ先生が本の最後で「おわりに」という題で語っている部分からです。ページはp.142-143の部分です。

そこにはこんな文章があります。

有吉先生にお願いしたのは「きちんと立つ」こと。そして自分の身体を自分でコントロールできる選手を作りたいということもお伝えしました。お話しさせていただくなかで、自分の間違いに気づかされました。それまで私は、選手が正しく立てないのは筋力がないからで、筋力があればちゃんとできるはずだと思っていましたが、そうではなかったのです。
選手たちは、筋力がないどころか、ありとあらゆるトレーニングをやり過ぎて身体がガチガチに固まっていたのです。石みたいに固まっている身体にまっすぐ立つように指導しても、土台無理なことです。まずは硬くなった筋肉を改善し、本来の状態に戻してから始めましょうと、有吉先生に言っていただきました。うまく出来ないのには、身体にゆがみがあるから、筋肉にこわばりがあるから、身体に痛みがあるからなどの理由があり、「コンディショニング」が解決手段となることを教えていただいたのです。
表現スポーツのコンディショニング―新体操・フィギュアスケート・バレエ編 (強くなるコアトレ) p.143
秋山エリカ先生は東京女子体育大学新体操部でご指導されていることからもわかる通り、基本的にそこの新体操選手たちはとりわけ新体操が上手な選手が多いと考えます。大学でも新体操を続けているという選手ですから、小さいときから新体操を生活の一部として練習してきた選手が多いのではないかと感じます。

そんな選手たちはまさに身体がガチガチに固まっているような、筋肉の使いすぎとも受け取れる選手が多いのではないかと考えます。

今まではそんな身体的に疲労した選手にも、画一的に指導者の理論無き指導により、できないことを無理にできるようにしようと、身体をより壊してしまう野蛮な指導をしてきたのが実態だと私は感じています。

実際に私も、選手ができないことを指導者が無理に体を押し得ようとした結果、体を痛めてしまったり、疲労骨折を招いてしまったりといった事情を耳にしたことがあります。

理論に基づかない無理と、理論に基づいた付加は大きく違うことは言うまでもありません。

新体操はこれから、今までの常識が間違いになり、新しい理論に基づいた練習やトレーニングを取り入れていくのでしょう。

秋山エリカ先生ですら数年前には知らなかったことがまだまだあり、指導者も新体操選手を教える側として勉強し、より良いケア方法を発見しようと頑張っていることは本当に良いことだと思いました。

私は新体操が理論に基づいた良識のある練習やトレーニングをするような、選手たちがけがや痛みに苦しまないスポーツになってほしいと思っています。それは、けがや故障により、のちに新体操が嫌いになってほしくないという思いもあるからです。

最後に秋山エリカ先生の言葉を引用して終わりにしたいと思います。
元気で明るくオリンピックの金メダルを目指す時代になることが私の理想であり、それを日本から達成できたら、本当に素晴らしいと思います。スポーツをすることで痛みがあるのはナンセンスです。心も身体も元気のままで、人として選手を育てていく、そういうスポーツ界を作りたい。コンディショニングはそのためになくてはならないものだと思っています。
表現スポーツのコンディショニング―新体操・フィギュアスケート・バレエ編 (強くなるコアトレ) p.143

もしこの言葉のとおりの新体操界になったら、本当に幸せですよね!
この本は本当に良い本だと思うのでもしよかったら、購入の際の参考にしてみてください!



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